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「帝王様、並びに王妃様。御初にお目にかかります。エスタシオ王国の第一王子、ハイドランジア・ペトラ・エスタシオと申します。本日は私の為にわざわざお時間を設けて頂きこの上ない幸福に御座います」
本来ならば声をかけられることすらもないであろう大国の帝王に非礼が無いようハイドは慇懃に挨拶をした。
「そんなに畏まらなくていいのだよ、顔をお上げ」
手で制されハイドは絨毯に腰を下ろすと再び深く礼をし、顔を上げた。
帝王と王妃はそれぞれ順に話し出す。
「本来ならば私の方が見舞いに行き挨拶をせねばならぬと言うのに、間が悪く私も寝込んでいてな…申し訳ないことだ」
「大変な事に巻き込んでしまってどうお詫びをすればいいのか…加減はあれから如何?」
「いいえ、此方での生活や気候が合いましてもうすっかり良くなりました。それにこうして帝王様王妃様にお目通りができ大変嬉しく存じます」
帝王はふっと目を穏やかに細めて頷いた。
「どちらにせよ私はあの子のしたいことに口出しはしない主義でね、まあ大臣共は多少騒ぐだろうが貴殿との結婚に何の反対もない」
「この人があの子の出生に対して罪悪感で甘やかしてばかりだからわたくしや兄王子達が口出しをする羽目になるのよね」
王妃がどこか非難めいた笑い声をあげるとハイドに微笑みかけた。
「わたくしは今一度問いたいのですけれど、ハイドランジア殿下はあの子の内面をご存知の上でお受けして下さるの?」
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