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「どう思う」
「何がですか」
案内された貴賓室の椅子に悠々と座り、ハイドは目頭を押さえた。
隣に立ったオリヴァーに何とも言えない目を向ける。
「あのガキだ、何故俺にあんなに固執するのかわからない」
「殿下、ガキではなくムスタファ様と」
「想像以上にガキだったぞ、毛も生え揃ってなさそうだ」
「下品なことを仰る口は縫いますよ」
恐ろしいことを言う奴だと肩を竦めて溜息をついた。
ハイドはムスタファの顔を頭に思い浮かべる。
彼と自分は今日が初対面の筈だ。
求婚の手紙だって不自然だ。大国の王子が会ったこともない遥か小さい国の人間に一体どうやって恋をするのか。
いくら若さの勢いと言ってもどうにも腑に落ちない。
「単に会ったら意外と顔が好みだったのでは?会ったことはなくとも殿下は隣接する各国でも美丈夫と名高い王子でしょう。どこかから噂が入ることもありますよ」
「…成程それは有り得るな」
ハイドは納得した表情で、膝に肘をついて口元に手を当てた。
「腹立ちますね、その絶対の自信」
「何を言う、俺は格好いいだろう。ここの王太子にだって見劣りしない自信はある」
「そうですね、でも代わりにおつむが少し足りないような」
「てめえ」
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