第三章◆愛憎の行方

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「俺が憎いなら俺を傷つければいい!」 「…」 ナーヒムは興ざめした瞳で額を地につけ懇願するムスタファを見下ろした。 「何故直接俺に来なかった!?ジャーミアを穢す必要は…!?ハイドを傷つける必要はどこにあったんだ!?」 「お優しいムスタファ様には自分よりも他人を傷付けられた方が効果があると思ったからです」 ムスタファは溢れ出る感情が怒りなのか悲しみなのかも分からずに涙を流し慟哭した。 「っ、どうしてなんだ!俺には何故お前がこんなことをするのかがわからない!」 「俺もわかりません、何故こんなことをしてしまったのか」 ムスタファが目を見開き顔を上げると、彼はどこか自嘲気味に笑っていた。 「ただ俺は貴方のその顔が見たかった」 ムスタファは泣きながらナーヒムを睨みつけた。 「わからないだと…!?ふざけるな…!どこまで馬鹿にすれば気が済む!?」 「本当にわからないんだ、貴方が尊い人だというのも王子に相応しい人間だというのもとっくの昔に理解しているのに…どうしてか貴方に対する苛立ちが消えない」 ムスタファはわけがわからないという表情をしていたが、ハイドにはナーヒムの気持ちがなんとなく理解出来ていた。     
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