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誰も呼びかけない、誰も近付かない。
同じ子供たちが差し伸べる手は一緒に遊ぶためではなく自分に暴力を振るうものばかり。
「ぅ…」
子供はその場に座り込んで足を抱えた。
ここまで走ってきた裸足の足は石で擦り傷ができて鈍く痛んだが、それよりも心の方が痛かった。
何故嫌われるのかわからない。
何故生まれてきたのかもわからない。
どうやって生きていけばいいのかすら。
もう消えてしまいたい。
化物の子供は緑色の目からぽろぽろと涙をこぼして泣きじゃくった。
「う、ぅあ、ひっ…うわああっ」
「だあぁあっ!」
その時大きな泣き声を掻き消すほどの怒声が響いた。
驚いて子供が振り返ると後ろにある古井戸の向こう側から一人の少年が勢いよく起き上がった。
「べそべそうるっせえんだよ!眠れねえだろうがッ!」
日の光に反射した髪は誰よりも綺麗な金色をしていた。
金髪の少年はびしっと指をこちらに突き立てると整った顔を苛立ちに歪めた。
「こちとらただでさえ勉強でクソつまんねえ詩集読まされてイライラしてんだよ!」
「っ…」
「プリムラのわがままに振り回されてこんな田舎町に来させられるわ、オリヴァーとはぐれるわ、睡眠は邪魔されるわ最悪の日だな!」
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