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ぱちくりと目を見開く化物の子供に、金髪の少年はあぁん?と眉をつり上げた。
「きったねえガキ」
金髪の少年はずかずかと大股で歩み寄ってくると子供の全身を上から下まで眺めた。
子供も同じように少年を見たが彼の着ている服は銀の装飾や見事な刺繍が施され、学のない子供からでも高価なものなのだと見て取れた。
おそらくこの町の町長よりも遥かに身分の高い人間なのだろうということがわかった。
「物乞いか?」
子供は驚いて固まっていたが、やがてまた思い出したかのように泣き出した。
少年はたじろいで子供を見つめる。
「えっ!…おい、なんで泣くんだよ」
「…」
「悪かったよ、汚えじゃなくてせめて小汚えくらいに留めとくから」
一緒の意味じゃないか。
聞く人が聞けばそう突っ込んだろうが子供は何も言わずにただぽろぽろ涙をこぼしていた。
少年は子供の手を引くとあやすように背中を撫でた。
「泣きやめよ、俺が泣かしたみたいになるだろ」
「…!」
子供は涙に濡れた目を見開いた。
「な?」
初めてだった。
人に撫でてもらったのも、優しい言葉をかけてもらったのも。
涙も止まってしまうほど戸惑っていると、少年が顔を覗き込んできた。
「お前なんでそんなボロ布被ってんの?」
びく、と肩を震わせた子供は自分を見つめる群青色の瞳を見上げた。
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