第四章◆覚悟と誓い

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そこからは国の力を使って半ば無理矢理に婚約をこじつけた。 そして訪れた彼を見た時には喜びに震えた。 会いたかった。 彼とまた話すことが出来る。 彼は自分の事なんて覚えていなかったが構わなかった。 好きになってくれなんて言わない。 ただ隣にいてほしい。声が聞きたい。笑ってほしい。 ――それだけで良い。 「(それだけで良かった、のに…)」 ムスタファは私室の窓辺に片膝を立てたまま腰かけた。 窓から見える夜空は暗く月が煌々と輝いていた。だが今はその輝きすらも淀んで見える。 「…」 ――お前は関わった人間を皆不幸にしてるじゃないか。 ナーヒムの言葉と去り際の表情が頭から離れない。 「(あいつの言う通りだ…)」 信頼を寄せていた臣下の心を壊し、自分を一途に想う女の人生を壊した。 何よりも大切な男は自分が愛したばかりに命を落とすかもしれない。 結局自分は何も変わっていない。 母親の時とまるで同じだ。 母は自分を産まなければ心を壊して死ぬことはなかっただろう。 「(俺の存在はハイドを殺す…)」 ハイドがもしも死んでしまったら。そしてその現実を目の当たりにしてしまったら。 初めて恋をした人。愛しい人。 自分が愛さなければこんなことにはならなかった。 そう考えるだけで体が冷たくなる。 「(怖い…)」     
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