第四章◆覚悟と誓い

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ムスタファは心配したようにジャーミアに声をかけた。 「…どうしてここに」 「貴方様の侍女に入れていただきました」 長い巻毛を乱し、薄絹一枚纏っただけのジャーミアはムスタファの傍へと歩み寄る。 ムスタファはそんな彼女にそっと手を差し伸べ、手を取ると自分の隣に腰掛けさせた。 月明かりに反射した滑らかなその手は冷たい。 「起き上がって大丈夫なのか」 「…少し外の空気が吸いたくて、もう大分薬も抜けましたから」 「…そうか」 そこからはお互い何も話さない。 少しばかり手を握りあって寄り添うと、ジャーミアが長い睫毛を伏せて口を開いた。 「こんな所でなにをしていらっしゃるのですか」 どこか咎めるような口調にムスタファは顔を上げ彼女を見た。 「え…?」 「ハイドランジア殿下はどうしたのかって聞いているんです」 ジャーミアの琥珀色の瞳が青白い月明かりに照らされる。 何も言わないムスタファにジャーミアは形のいい柳眉を逆立てた。 「刺されたと、そう聞きましたわ」 「…っ」 「なのにどうしてムスタファ様はここにいらっしゃるの」 ムスタファはジャーミアの表情に気圧され喉をつまらせた。 そしてぽそりと消え入るような声で呟いた。 「…会うのが、怖い」     
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