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ムスタファはずっとハイドを愛していた。
今もその気持ちは変わらない。
でも、自分がこうやって愛することでハイドが傷付くのなら。
「俺は誰かの傍にいちゃいけないんだ…!」
所詮自分は化物なのだ。
あまりにも彼が優しくて綺麗だから、身の程を弁えずに恋をしてしまった。
手が届くかもしれないと思ってしまった。
「俺はナーヒムも、貴女も、ハイドランジアも不幸にしてしまった…!俺が愛することで誰かが傷つく姿はもう見たくない!」
「っ!」
ムスタファは悲痛な表情で嘆く。
するとジャーミアは目を尖らせて手を大きく振り上げた。
空気の渇いた音が響きムスタファは驚きに目を瞬かせる。
「意気地無し!!」
ムスタファは何が起こったのかわからない様子でただ叩かれた自分の頬を押さえた。
「ジャ、ジャーミア…」
「貴方は逃げているだけよ!」
ジャーミアは端正な顔に怒りを浮かべながらムスタファを睨みつけている。
「辛い現実を受け止められないからそうやって何かのせいにするの、この弱虫!」
ジャーミアはムスタファの胸ぐらを両手で掴み、ぐっと顔を近づけると吐息がかかりそうなほどの距離で怒鳴った。
「ハイドランジア殿下を遠ざけたら次はどうするの?不幸でかわいそうな私とお情けで結婚でもする気!?」
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