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「何故黙って行ってしまうんですか!陛下との謁見ならば俺も付いていったのに」
顔を上げて怒るムスタファを宥めるように何度も額に口付けする。
「少し一人で話したいことがあったんだよ。大丈夫だよ、ちゃんと許してもらえたから」
「…」
「何だよ、置いてったから拗ねてんのか?もう一人で留守番くらいできる歳だろ」
「こ、子ども扱いして…」
額から顔に唇を移動させてとにかくキスしまくるとムスタファは照れているような不満げなような表情をしてハイドを見上げた。
そんな少年らしい表情を間近で見せられハイドの心臓がきゅんと音を立てた。
「まだお二人とも大広間にいらっしゃるだろうから、挨拶だけしてきたらどうだ。両親とは普段滅多に話したりしないんだろ」
「え、でも…」
声を小さくして目線を彷徨わせるムスタファにハイドは微笑み自分より小さな体を抱きしめた。
「ちゃんと待っててやるから行って来いよ」
「…はい」
ムスタファはその言葉に背中を後押しされゆっくり頷いた。
本当に待っていてくださいねと強く念押しをしてからムスタファは名残惜しくハイドから離れ大広間に向かって歩いていった。
その後ろ姿を見つめながらハイドは緩んだ頬で呟いた。
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