625人が本棚に入れています
本棚に追加
「くだらん猫かぶりはやめておけ、貴殿ががさつで粗野な人間だということはとっくに見抜いている」
「…ああそうかよ、ならこっちもがさつな素でいかしてもらうぜ。堅物粘着野郎」
ハイドは舌打ちをして腕を組むとスールカーンを睨みつけた。
スールカーンは表情をぴくりとも動かさずにハイドを見下している。
「貴様のような男は弟の相手に相応しくない」
「貴様呼ばわりか。仲良くやろうって言ってんじゃねえか、なあスールカーンお義兄様よ」
「気色の悪い呼び方をするな」
「じゃあどう呼ぶ?デカブツか?」
「そ、そこまでにしよう、二人共」
完全に蚊帳の外だったアリージャが珍しく慌てた様子で二人の間に割って入った。
何とか怒りを鎮めようと宥めるが、女の好む甘さのある彼の顔立ちは完全に引きつってしまっている。
「なんだってそう仲が悪いんだい?歳が近いせいかな?」
「いえ、この男…初めて見た時より好かなかったのです。俺の最も嫌いな人間だ」
「それは奇遇」
アリージャの腕を押しのけハイドはぐっとスールカーンに顔を近づけた。
「俺もだ」
「…ほう」
寒い。
周囲の気温が5度以上は下がったような気がする。
外の日は高くむしろ暑いと感じなければおかしい筈なのに。
身震いをしたアリージャは流石にこの流れはまずいと感じ取った。
最初のコメントを投稿しよう!