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二人共今にも食い殺し合いを始めそうな雰囲気だ。
双方の立場を慮っての遠慮というたがが完全に外れてしまったらしい。
「ま、まあ二人ともそういきり立たずに、兄弟が増えるのはいいことじゃないか」
「……」
「……」
「えっ無視?」
ハイドの目にもスールカーンの目にも自分達以外の存在はないようだった。
お互いを射殺さんばかりに睨み合い火花を散らしている。
「大層弟君のことを可愛がっていらっしゃるようでぇ?近親相姦の気を疑われるぞ。弟離れできねえ寂しい兄貴ってか」
先に攻撃を仕掛けるハイド。
「貴様には関わりのないこと、こんな男と生活など弟が穢れる」
すぐさま応戦するスールカーン。
「俺はもう妻だ、テメェは剣とでもまぐわってな」
「認めぬ、ごろつきの田舎王子が」
二人の罵りあいは止まらない。
「いいか、てめえの可愛い可愛い弟はもう俺のもんなんだよ。安心しろ、ちゃんと俺の手で男にしてやるからよ」
「貴様ッ!!」
その言葉が逆鱗に触れたらしく、スールカーンはハイドの胸ぐらを掴みあげた。
瞬間ハイドがにやりと悪どい笑みを浮かべた。
「何を笑って…」
「兄様!?」
「!、ムスタファ…!」
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