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「此度の騒動も俺の王子としての器を成長させる為にお兄様方は沢山尽くしてくださいました。俺が自分の力で何とかできるように色々考え、欠点も教えてくださいました」
「…」
「結果ジャーミアや貴方を酷く傷つけてしまいましたが…」
俯きかけたムスタファの頭をハイドの手が荒く撫で回した。
「終わったことだ、反省はいいが後悔するのはやめとけ」
「…はい」
ハイドは欄干に両肘を預けるとムスタファに身を寄せた。
「その御褒美に俺が手に入ったんだから無くしたもんばかりじゃねえだろ?」
多少自惚れ気味に言ってのければようやくムスタファはいつもの表情に戻りハイドに微笑みかけた。
「どんな金銀財宝よりも綺麗な褒美品だ」
「…おう」
「ハイド?」
「…さらっと口説いてくんな、心臓止まるわ」
ハイドは不意打ちの口説き文句に心臓をどくどく鳴らした。
本人は何がですがとでも言いたげにきょとんとしている。無自覚に言っているようだから始末が悪い。
「初めて見た時からずっと綺麗な人だと思っていたから」
「そりゃどーも…」
ムスタファ以外の人間には今までどんなに甘い言葉を囁かれようと心動かなかったというのに。恋心とは不思議なものだ。
ハイドは熱く火照った顔を誤魔化すように顔を背けた。
「…そういや来たばかりの時、何で過去のことしっかり言わなかったんだ?あの時ちゃんと詳細を話せば思い出したかもしれねえのに」
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