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終章◆二人の未来
「やっぱり白か青がいいわ、赤はやめましょう」
「天鵞絨でしょうか、絹でしょうか」
「天鵞絨がいいと思うわ。長衣は金襴もいいですけれど銀刺繍の帯に合わせるにはちょっと派手かしら」
きゃあきゃあと笑いさざめく乙女達の声。
増えやがった。
ハイドは内心そんなげんなりした気持ちでいっぱいだった。
赤、白、青、金。次々と眼前に広げられる豪奢な布に目がちかちかする。とても既視感を感じた。
「…はあ」
ハイドはこれまでにないほど大きな溜息をついて寝椅子に体を預けた。
そんな姿を見てジャーミアがもう、と細い腰に両腕を当てる。
「ハイドったら貴方の婚礼衣装よ。ぼうっとしていらっしゃらないで」
「そうですわ。ちゃんとお決めになってくださいな」
ファティマも絨毯に広がった布を片手にハイドを見上げた。
「…なんでも」
「「駄目っ!」」
ばっさり両断。
本当に何でもいいというのに女はどうしてこうも衣装にこだわるのだろうか。
女三人寄れば姦しいとはよく聞くが二人だけで十分にこの威力。もう一人来たならきっと自分は死んでしまうとハイドは目を片手で覆った。
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