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しっかり聞いてしまったムスタファはファティマの小さな肩を掴んで無言の圧をかける。
しかしファティマは目線を床に下げてだんまりを決め込んだため、ムスタファの恨めしげな目はハイドに向けられた。
ぎくっとハイドの肩が跳ねる。
「手玉とは…?」
「まあ、な、ほら、あれだよ、あれ。な?」
「どれだ!はっきり言ってください!」
「ム、ムスタファ様ーっ!落ち着いてください、あ、あれですから!」
「どれだ!!」
ジャーミアはぎゃあぎゃあ騒ぐ三人を見て頬に手を当てて溜息をついた。
そして同じように溜息をついているオリヴァーにその琥珀色の目を向ける。
「ハイドのものは大方は決まったわね、では次はオリヴァー様のものを」
「え」
「え?」
まさか自分に飛んでくるとは全く思っていなかったらしいオリヴァーは素っ頓狂な声を上げた。
ジャーミアは首を傾げて何か?とでもいいたげな笑顔を向けている。
「従者の方もきちんと身なりを整えて頂かないと」
「いや…俺は、なんか適当なもので…」
上手いこと言い逃れをしようとしたオリヴァーだが、目敏くハイドに見つかり逃げ口を塞がれる。
「いいじゃねえかオリヴァー、選んでもらえよ」
「なんですかそのざまあみろ顔は…」
「ざまあみろ」
「殿下!」
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