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「だから何故俺だと言っている!確かにエスタシオも大砂海帝国も同性婚に偏見のない国だ。だがこういったことは基本女の役目だろう。妹のプリムラを寄越せばよかったんだ、性根は悪いがあいつはれっきとした第一王女なんだからな!」
「そうですか。プリムラ姫と貴方の性根は瓜二つですがね」
怒りか暑さか、顔を赤くして声を荒らげる姿にオリヴァーはやれやれと肩を竦めた。
「致し方ないでしょう、向こう側が殿下を名指しでお求めになられてるのですからね。国王陛下もこんな話をお断りすることは出来ませんよ」
先程までの勢いはどこへやら、ハイドはうっと押し黙る。
オリヴァーの言う通りだった。
ハイドのいたエスタシオ王国は正直いってお世辞にも大きいとも屈強とも言えない国だ。
伝えるとするならそれなりに盛んな小さな国、その程度。
対して大砂海帝国は少し環境的には厳しいものの、過去の戦争では敗北を許さず今も尚その強さを維持し続ける歴史ある大国だ。
そんな大国の王族がわざわざハイドを伴侶に迎えたいと言ってくれている、エスタシオには断る理由がない。むしろ断っては失礼にあたる。
だが、断る理由が国になくともハイド本人にはあるのだ。
「誰とも結婚するつもりなんぞなかったのに、父上は国のために俺を売ったも同然だぞ」
「そうですねえ、貴族のお嬢様方の恋文も全てお断りしてきた殿下もそろそろ年貢の納め時でしょうね。嫁ぐ側の年齢からしたら殿下は立派に行き遅れですよ」
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