第二章◆後宮の毒牙

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「何にせよ商人達が捕まった今、貴様のことも露顕する恐れがある。ごろつきに近い人攫いと組み違法奴隷市への斡旋をして金稼ぎをしていることがばれれば次こそ牢獄行きだ」 「~~っ、おのれ…!」 マフディーは顔を真っ赤にして血がにじむほど唇を噛み締めた。 「一度あいつの吠え面を見ねば気が済まんわ!!わしにひれ伏して絶望する顔だ!それさえ見れれば牢獄だろうが何だろうが行ってやるわ!」 怒りのまま砂を蹴ったマフディーに大外套の男はとても静かに、だがしっかりとした意志を込め言った。 「…ならばいい方法があるぞ、乗るか?」 +++++ 「あの、オリヴァー殿…本日は…?」 大砂海帝国の王宮内、ハイドのいる貴賓室ではファティマが心配そうに目の前に立つオリヴァーを見つめていた。 「いや…すまんな」 「そう、ですか…片付けますわね」 申し訳なさそうに首をふるオリヴァーに、ファティマは眉を下げて目を潤ませた。 彼から手渡された盆、上に乗るのは少し前の時間ファティマが持ってきたハイドの食事だ。 「(やだ…殆ど減ってない)」 ファティマはほぼ手付かずの料理を見て溜息をついた。 事の発端はハイドが紅玉の宮へとムスタファと逢瀬をしに行ったあの夜。 あれからハイドの様子が見るからにおかしくなってしまった。 食事はほとんど手付かず、言葉も交わさずにほぼ毎日寝所にこもりきりだ。     
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