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ハイドの齢は今年24になるが、ムスタファはもしかすると妹のプリムラとそれほど年が変わらないかもしれない。
ただでさえ気持ちのない婚約の上に、相手は子供。
げんなりとしながらも決してそれを表には出さずに微笑んだ。
「ムスタファ殿下、殿下のような素晴らしい方ならば引く手は数多でしょうに弱小国の一皇子である私を選んでくださり大変光栄でございます」
「とんでもございません。俺にはもう貴方しか見えないのです。貴方と婚姻出来るなんて夢のようです」
ひくっと引き攣りそうになる口元を必死に押さえながら、少しばかり照れるふりをして頷いた。
「こらこらムスタファ、そう急くんじゃない。まだお前達は婚約の身であって正式な伴侶ではない。相手をゆっくり知っていく必要があるだろう、ハイド殿下もそれをお望みでこちらにいらしてくれたのだぞ」
かなり熱烈、というより強引に話を進めようとするムスタファをアリージャが冷静になるよう窘めた。
ああこの強引さは知っている、とハイドも苦笑いをうかべる。
求婚の手紙が届いてからというもの、一応は世の慣習として手紙のやり取りをしていた二人。
やり取りというよりはほぼ一方的に向こうから送り付けられてきていた様なものだが。
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