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ようやく綻びはじめた梅の花が、寒さにじっと耐えているようだ。
雪が目に映るすべてを白く塗り替えていく。
ブルッと身を震わせた君は、モコモコのマフラーをしっかりと巻き直した。
「ごめん。ふーちゃんがせっかく新しいカメラを試そうとしたのに、まさか雪が降るなんて」
「どうして魁くんが謝るの? 雪は魁くんが降らせたんじゃないでしょ?」
君はそう言ってくれるけど、初めてのデートの日も雨だった。
別に僕は雨男というわけではないのに、どういうわけかデートの日に限って雨が多い。
雨が降っていても君はいつも楽しそうだけど、さすがに今日の雪には驚いた。今年初めての雪だ。
「予報では曇りだったのにな」
恨みがましく空を見上げても、後から後から雪が舞い落ちてくるだけ。
「雪景色も素敵だよ」
傘を地面に放り投げてカメラを構えた君は、いつでもポジティブで奔放だ。
僕はと言えば、真新しい君のカメラが濡れてしまうのが心配で傘を差しかけてしまう。
「いいカメラだね」
「うん。新しいお父さんが誕生日に買ってくれたの」
「そっか。良かったね」
本当に良かった。君がお母さんの再婚相手と仲良くやっているようで。
「うん。私が写真に興味を持つようになったのが嬉しいんだって。なんかね、自分の影響だと思ってるみたい。本当は魁くんの影響なのにね」
クスッと笑った君の横顔に見惚れていた僕は、遅ればせながら君の言葉に感じた違和感の正体に気付いた。
「え? ちょっと待って。ふーちゃん、誕生日って言った?」
「うん。先週、私の誕生日だったの」
「ええっ⁉」
聞いてないよ! 一応、【彼氏】なのに。
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