しっとりと、ふんわりと

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降り始めた小雪。 視界が白の世界に濡れていく。 首から提げたカメラを構え、かじかむ指をそっとシャッターに添える。 「どうして、そこにいるの」 カメラのズームで捉えられず、眼鏡のフレームからも外れた視界の端の端に、存在を確認した。 うっすら色付く蕾を摘まんでいた指が、そっと私へ向けられる。 「キミに、とらわれそうだから」 春を待つ妖精は、陽だまりのような温もりを滲ませ微笑む。 優しい指先が私の髪を撫でると、乗ったばかりの白銀の結晶を溶かし、しっとりと濡らした。 構えたままのカメラを向ける事が出来なくて、眼鏡のレンズがうっすら曇る。 「とらえに来たのよ、アナタを」 寒いのも冷たいのも、キライ。 暖かな春がこの手に欲しくて。 鮮やかな彩りをフレームに切り取りたくて。 アナタは、四角い枠にはまってくれないのね。 眼鏡のレンズにも収まらない。 待ち遠しい、存在。 *end*
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