想い

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親父が眼を覚ました。 「手術は終わったからね」 母が親父の手を握りながら話しかけた。 親父は黙って頷いた。 それから1か月が経ち、最後は自宅で診る事にした。 同居している妹が看護師だったこともあるが、最後は家族・親族で一緒に居たいと思うからだ。 ただ、親父には病気の事は言えずにいた。 回復するのに時間がかかるから、在宅療養に切り替える事になったとだけ伝えていた。 親父から、見舞いに来てくれた人にお礼をしたいとの事で、お礼の品を用意して欲しいと。 決して良くならない事を知らずに・・・。 40人分のお礼の品を用意した。 親父の希望で、自分が動けるようになってから私に行くからと・・・。 その品物は結局渡す事が出来ないまま親父は逝った。 あれから10年。 私にも孫が出来た。 親父の葬式の時の記憶が無いほど憔悴していたし、今までなぜもっと早くに外科へ転科させなかったんだろうとの後悔しか無かった。 孫の誕生を報告に墓参りに行った。 今までに何回も来ているが、今日は初めて墓前で空を見上げる事が出来た。 何気なく見ていた風景。 その時の空の雲の流れや差し込む日の光。 とても優しく、暖かく、穏やかに感じた。              完
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