私の景色

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A「あの・・・マフラーありがとう。」 ーー 1時間前 やけに寒いと思って窓から外を見ると、なんと雪がチラついているではないか。 雪でテンションが上がった私は思わずカメラを手に持ち、慌てて家を出る。 ハァハァ 白い息を吐きながら必死に街の中を走る。私の住んでるこの街は、雪なんて滅多に降らない地域だ。すれ違う人達も見慣れない雪に思わず立ち止まって空を見上げている。 雪景色を撮りたい。 それだけを思い、私はシャッターチャンスを逃さないよう一生懸命走った。私のお気に入りの場所『秘密の丘』なら良い写真が撮れそうだ。 長い階段を登り、小さな森みたいな道を少し奥に進むと街中を一望できる場所がある。私はそこを秘密の丘と名付けた。 降り続ける雪。寒さで頬が赤くなりながらも秘密の丘に着いた。走り疲れた私は両手で膝を抑え、下を向き呼吸を整える。 そしてゆっくりと顔を上げる。いつもの景色とは違い、街にも薄っすらと雪が積もり白景色になっていた。 うわぁっと思わず雪の積もった景色に見惚れる。しばらくしてハッと本来の目的を思い出しカメラを構えた。 ふわっ 何だろう。急に首元が暖かくなった。見てみると白いマフラーが巻かれている。私は頭の中が???となっていた。 そんな私の横に私と同じくらいの年齢の男性が来て座り込んだ。彼も景色を眺めている。 私は思わず彼をじぃっと見る。この白いマフラーは彼のだろうか。お礼言わなきゃ。 A「あの・・・マフラーありがとう。」 B「うん、なんか寒そうだったから。」 A「雪でテンション上がって慌てて家出たから、寒さ対策忘れてたわ。」 B「あはは、雪が降るなんて珍しいもんね。俺もテンション上がった。」 気づけば私にも薄っすらと雪が積もっていた。彼は無邪気な笑顔で話す。しばらく景色を眺めながら2人で色んな話をした。 受験も終わり春から高校生になること 写真を撮るのが趣味だということ 彼もこの秘密の丘がお気に入りだということ そろそろ帰ろうかなっと彼は立ち上がった。 A「あ、マフラー・・・。」 B「春になるまで持ってていいよ。じゃあまたね。」 彼は笑顔で手を振り帰っていった。私は寒さとは別に頬が赤くなり両手で巻いてあるマフラーをギュッと握りしめる。 ーー そして春。 桜の花びらが舞い落ちる中、私は高校生になった。そして、同じ高校の制服を着た彼と再会する事を私はまだ知らなかった。
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