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 大学の同期である曽根から結婚式の招待状が届いたのは、秋の初めの、ちょうど秋桜が咲き始めた頃だった。卒業して六年、たまにネットでのやりとりがある程度で、本人とは一度も会ったことはない。ずいぶんと迷った挙げ句、出席に丸をつけて返信した。  躊躇いがあるのは、一時期、曽根と付き合っていたからだ。曽根は(せい)とは違いゲイではない。しかし整のか細い体つきと中性的な容姿は、曽根の好みのどストライクをついたらしく、ノーマルな男とは付き合うのは絶対にごめんだとはなから取り合おうとしない整に、その持ち前のしつこさと楽天的な思考回路で幾度となくアプローチを仕掛けてきて、結局は整が根負けした形で付き合い始めた。  明るく表裏のない曽根は、付き合い初めてみれば驚くほど幼稚な性格で、「好きだ」という自己の感情を整にぶつけていれば機嫌が良く、整が他の人間(それが男だろうと女だろうと)と親しくしているとあからさまに嫉妬を現わした。まるで大好きなおもちゃをみせびらかすように、整との関係を誰彼構わず周囲にひけらかして整を辟易させた。  単純な曽根の性質は、セックスにおいても変わらなかった。本能のままに整をゆさぶり、達する。それは快感とはほど遠いもので、AV受け売りの行為をすれば相手も気持ちよくなるはずだと真面目に信じているあたり、呆れを通り越して滑稽ですらあり、仕方なく整は前日に見たバラエティ番組の内容を思い出したり、時には羊の数を数えながら、行為が終わるまでの時間をやり過ごした。  そんないきさつがあるのだから、いまは普通の友人関係とはいえ、本来は結婚式に出席できる立場ではない。それでも式に参列することを決めたのには、ある理由があった。
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