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 曽根には城野(じょうの)という友人がいた。背の高い曽根よりもさらに5センチほど高く、手足の長さが際立った体躯の持ち主で、明るく染めた癖のある髪が、肌の白い、小さな顔とよく合っていた。無口で穏やか、曽根とはまさに対照的な性格の彼は、曽根と同じ高校出身で仲が良く、際立って容姿が良いふたりは大学内でも周囲の注目を存分に集めていた。  人見知りの整は、初めはなんとなく城野が苦手だった。自分が曽根と城野の関係に割って入るようで、後ろめたい気持ちもあったのだ。  しかしそんな心配は杞憂で、城野は整を自然に受け入れてくれた。それどころか、単純なあまりふたりの関係を隠そうとしない曽根の態度を咎めたりして整を気遣ってくれる。それに、城野は聞き上手だ。自己主張の塊である曽根は常に喋ってばかりだが、城野は整の表情から心情を察して、それとなく話を聞きだしてくれた。構内では三人で行動するのが常で、いつしか整は、曽根と過ごす時間よりも、城野が加わって三人で過ごす時間に悦びを見いだしていた。    だから、その夜、整のアパートに泊まりにきた曽根が「城野も呼んで飲もうぜ」と言い出した時、整は嬉しかった。曽根とふたりで過ごす時間はただただ気詰まりで、付き合って三ヶ月、整はいつ曽根に別れを切り出そうかと考え始めていた頃だった。 「待たせたな」と言って現れた城野は、手に大きなレジ袋を提げていた。三人で飲むには多すぎるビールの缶と、つまみやスナック菓子をテーブルにひろげて乾杯する。 「そういや整とふたりで飲んだことねえな」 「そうだっけ」 「普段の整も色っぽいけど、酔った整がどんなになるかすげー楽しみ」 「それ以上言ったらマジ殴る」 「こういうツンツンしたところも可愛いんだよ、整は」  曽根にぐいと引き寄せられる。思いの外力が強く、整は頭をぐしゃぐしゃにされながら、顔をしかめて耐えていた。
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