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「それ以上絞めると葛原が死ぬぞ」
城野の声に、曽根が「あ、ごめん」といって腕を緩める。城野はにこりと笑って整を見つめたあと、喉を鳴らしてビールを飲んだ。
城野なら、と整は思う。もし城野が恋人なら、きっと自分は満たされる。しかしそれはかなわない想いだと、整は知っている。城野には高校時代から付き合っている彼女がいる。
ビールの空缶が床に散乱している。ゲームをしたり、くだらない噂話で盛り上がって、時計は深夜一時を回っていた。整は酒に強い方ではない。それでもふたりのペースに巻き込まれて、その夜はかなり酔いが回っていた。
「俺寝るわ」
顔色ひとつ変えずにビールを飲み続けていた城野が出し抜けにそう言って、ごろりと身体を伏せた。しばらくすると、くうくうと心地良い寝息が聞こえてくる。ベッド下の収納から毛布を引っ張り出して、城野の身体にそっと掛けた。
「俺も眠い」
「えー、やっとふたりきりになれたのに」
曽根の腕が、整の肩を引き寄せる。バランスを崩して、曽根の身体に倒れ込んだ。
「っちょ、なにすんだ……」
「整、しよう」
耳許でささやかれたその声に、整は瞠目した。強いアルコールの匂いに、眩暈を覚える。
「嫌だ」
身体を捻って必死に逃げだそうとするが、泥酔しているのか、曽根の身体は鉛のような重量で整を組み伏せる。
「騒いだら、城野が起きるぜ」
にやりと笑った曽根のくちびるが、整のくちびるを塞ぐ。ぬめった舌が侵入して、整は身を震わせた。
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