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「ああ…やっと、殺しに来てくれたんだね? 大遅刻だよ。 もう、待ちくたびれちゃったんだから。 私の雪女さん」
そう言って、真っ直ぐな瞳で私を見つめる彼女。その手には、十三年前に出会った時と同じ、彼女のお気に入りのカメラが握られていた。
「っ…どうしてっ…! なんで逃げなかったのよ……!」
私は、折れそうになる心を必死に抑えながら、彼女にそう問い掛ける。強く握り締め過ぎた私の拳は、食い込んだ爪で皮膚が破れ、地面に紅い模様を描いていた。すると、彼女は、私を静かに見つめたまま呟いた。
「だって……もう一度、貴女に逢いたかったから。 もし、また貴女に逢えるなら、こんな命なんて要らない。 ずっと、そう思ってたんだよ。 貴女に逢った時から、ずーっと、ね。 雪女さん」
彼女のその言葉と表情に、涙が溢れ出そうになる私。
(嗚呼…何故、彼女は人間なのだろう。 何故、私は雪女なのだろう。 何故、私達は一緒に生きられないのだろう)
そんな、魂の叫びにも似たーー焦がれる様な思いを隠し、私は彼女に向かい合う。これから殺す、私が命を奪う彼女へと。そうして、私は、彼女の細い肩へと静かに手を置いた。
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