始まりの時

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 二十年の時が経ち、少女は女性となり家族を持っている、はずであった…… 「かあさん、とうさん。無理はしないでください……」  当時の面影が色濃く残る、月奈は、ある日を境に歳をとらなくなっていた。  始めに気づいたのは、いつまで経っても月経が訪れないことであった。  二十歳になる頃には、明らかに他の者達と比べ、幼さが拭いきれず、その頃から月奈は人前に姿を現さないようになっていた。  とても明るく、はつらつとしていた面影はもう、今は無い。  人目を恐れ、自分の殻に閉じこもることが増え、村の者からも、いつまでも成長していないことをいぶかしまれるようになり、両親と月奈は山奥へと住居を変えることとなった。  月奈は、いつものように収拾のために山に入ったときだった。 (煙があがっている、この辺りに人家なんてないはず)  不思議に思い、煙の元を探してみると、それは自分の家の方角であった。 「まさか……」  不安にかられた月奈は、籠を落としたが、気にすること無く駆けだしていた。  不安は的中し、建物は壊され、火をかけられていた。 「とうさん、かあさん!」  建物の中を叫びながら、両親を探すと、老いた父が虫の息で語る。 「月奈、にげるのじゃ。お前を村の者が……」  そこまで口にした父は力尽き、事切れていた。
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