始まりの時

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「や、やめろ!近づくな!」 「この子だけは、お願い、助けて!」  月奈は、この日、秘めた力が暴走していた。月奈が成長を止めたのも、常人が持たぬ力故の事だったが、今それはどうでも良かった……  生気を失い、悪鬼の如き表情の月奈は、村人を根絶やしにし、返り血を全身にあび、真っ赤に染まっていた。  そして、一つの村が壊滅した。自我を失った、月奈は、別の村をも襲った。  人々は、月奈を鬼と呼び、恐れ、次は我が身かと、その地域一帯に噂がひろがっていた。  自我崩壊を起こした月奈は、ある日、邪神が封じられたという噂がある、山の祠へとたどりついていた。 『そなた、心が壊れておるな……』 「……」  月奈は、ただ呆然とその声をきく。 『大切なものをなくしたか、我と同じだな。このままでは、そなたも我と同じ道をたどることになるな』  そう伝うと、体を光で包み込む。 『我と共に眠れ、何もかもを忘れて……』
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