始まりの時

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 それから何年の時が経ったか分からなかった。月奈が心を取り戻したときには、体の自由が無く、自らを龍神だといい、邪神とされ封印された、古の神という姿形を持たぬ者と二人、永遠ともいえる長い時を過ごしていた。  二人は、祠から出ることも出来ず、ただ時を過ごしていた。月奈は、龍神だと言った元女神の過去の話を聞くことになった。  自分はある娘の思いから生まれ、長きにわたり神として国を支えたのだそうだ。だが、ある日国を攻め込まれ、滅ぼされかけたことにより、暴走した彼女は敵味方関係なく、見境無く人々を殺してしまったのだそうだ。  我を取り戻した彼女は、捕らえられ、多くの者に力でおさえこまれると、そのまま祠へと封印されたのだそうだ。  力を使えば、抗うことはできたのであろうが、自我を取り戻した彼女は、甘んじてそれを受けたのであろうと、月奈は感じていた。邪神といわれた彼女に、ここで封じられることがなければ、自分も同じ運命をたどっただろうということは、想像に難くなかった。
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