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封印されたとはいえ、肉体が存在する月奈は、永遠ともいえる時の流れに耐えうるため、心と共に肉体を完全に凍結した。邪神とよばれし、龍神が力を貸してくれたこともあり、それは容易に出来た。
そして、さらに時は流れたある日のこと。
『……な、つ……な、つくな』
(りゅ、龍神さま……)
『ようやく目覚めたか、起こすのに一苦労したぞ』
意識をおこし、目覚めた月奈は、体が動くことに、驚いた。
「これは?」
『そなたは、そこの者と行け。我とは違い肉体もあり、今となってはそなたのことを知るものもおらぬ。咎を問われることもあるまい』
その言葉を聞き、視点の定まらぬ目をこらし、見ると、眼前に一人の青年が居ることに気づいた。
「俺は、瀧飛、そこの邪神、龍神の噂をきき、やってきたのだ。龍神とは血の契約を結び、力を借りることを約束した。お前を俺の旅に同行することを前提にな」
「は、はぁ……」
意味が分からないといった様子で、こてりと首を傾ける。
「名はなんというのだ」
『弥那代、そう呼ぶがいい』
「え、わ、私は……」
月奈は困惑したが、龍神はつづける。
『名を改め、人生をやり直すがいい。前の名は我にとっても、悲しい名なのだ』
ツクナという名が、龍神にとって特別で、それでいて悲しい過去を思い出す名でもあるとかつて聞いた。ツクナは、龍神の生みの親であると同時に、自分に力を託し、自ら命を捨てた悲しい娘の名だと聞いたことを思い出した。
「わかりました、私は弥那代、よろしくお願いします瀧飛さま」
『瀧飛には、私が力を貸すことの条件として、お前の暴走を止める役割をあたえた。まぁ、今の状態であれば、暴走することもなかろうがな。新たな人生を歩め、弥那代よ』
「いままでありがとうございました。このご恩、一生忘れません。名も無き龍神さま」
『名はあるが、名乗りたくない。忘れてくれ、我のことは……』
そして、永遠ともいえる永き眠りから覚めた、弥那代は、瀧飛と共に旅立った。
これから、永きにわたる、戦いへと身を投じる旅へと……
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