いつか、あの星のように

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 *             夜空を見上げていた。 かつて冬の寒い時期に幼馴染と並んで座り 夜空を見上げた、遠いあの日のように。 4月の終わりとはいえ、深夜の空気はとても冷たくて じっとしていると身体の芯から冷えて 風邪を引いてしまいそうだと、軽く首に巻きつけていたマフラーを 改めてきつく隙間なく巻き付けた。 見上げた空には星が零れ落ちそうなくらいたくさん光っている。 綺麗だな。 特に星に興味があるわけじゃないけど単純にそう思う。 智哉がいなくなってから こうやって夜空を見上げることが多くなった。 ーーーーいつかのあの星みたいに、どこにいても周ちゃんのことずっと思ってるから 残してくれたあの言葉を思い出し 星の綺麗な夜は、智哉の存在を近くに感じられる気がするから。 「4月はこと座流星群が見れるんだってさ。  運がよければ今夜もたくさん見られるらしいぞ」 返事はないと分かってるけど、話しかけずにはいられない。 そうして未だ自然に溢れ出す涙に苦笑しながら、手の甲で頬を押さえる。
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