いつか、あの星のように

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「彗星、消えちゃったんだって」 「え?」 「ホラ、アイソン彗星だよ。今日、ニュースで言ってた」 「ああ、それか。俺も今朝ニュースで見た」 最近ニュースで話題になっていたある彗星。 地球に接近したこの彗星が地球から肉眼で確認できるのは たった2週間程で、これを逃したら一生見ることはできないと言われていた。 「このタイミングで生きてることって、スゴイことだよね」 俺は別に何とも思わなかったけど。 無関心な俺を気にすることなく、 「あと一週間もすれば、早朝5時くらいには肉眼で確認できるらしいから 一緒に早起きして見ようね」 智哉はその大きな目を輝かせて興奮気味に無理矢理俺に約束させた。 それが2日前のこと。 そして今日になってニュースは一斉に、この彗星が突然消滅してしまったことを告げた。 結局その彗星を肉眼では誰も確認できなかった。 「絶対周ちゃんと一緒に見ようと思ってたのにな」 はあ、と吐いたため息はその向こうの闇の中でまた白く浮かび上がる。
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