いつか、あの星のように

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「あの彗星ってね、消えたりしなかったら  地球にぐっと近付いて、それからまたずーっと遠くに離れて行って  地球からは永久に見えなくなるんだけど。  見えなくなるだけでこの空のどこかに存在はしてるはずだったんだ」 まるで今日あった出来事をつらつらと話すかのような 軽い口調で智哉は話す。 「目の前からいなくなって、見えなくなるけど  彗星は僕たちのいるこの世界のどこかにちゃんと存在してる。  そう聞いたとき、いいなって思ったんだ。」 穏やかなほほえみの裏に見え隠れする、幼馴染の本心に気付いて もう言うな。 きつく結んだ唇の奥、 溢れ出しそうな言葉を押し込める。 「周ちゃんと一緒に彗星が見たいと思ったのはね」 それ以上言わないでくれ。 幼い頃からずっと見つめてきたそれと同じ 無邪気な笑顔に向かって心の中で叫ぶ。 だけど、声にできないままの心の声なんて届くはずもなく。 「俺がいなくなっても、会えなくなってもあの彗星みたいに  どこか遠くにいて、周ちゃんのこと思ってるからって言いたかったんだ。  ちょっとクサいけど、それって記憶に残りそうだろ?」 またどこか得意げに見える笑顔でふっと笑うと 真っ暗な景色の中に、また白い息が浮かぶ。 「俺はずっと周ちゃんのこと好きだから。その気持ちだけは  消したくないから」 話している間、緩やかにずっと上がっていた幼馴染の広角が不意に下がり 冷たい風に色を無くしかけている唇を 何かを堪えるようにきゅっと噛んだのが見えた。 「好きだけは絶対に消せないから、誰にも」 掠れる声でもう一度、確かに智哉はそう言った。
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