いつか、あの星のように

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「周ちゃん?」 「なあ、俺たちだけの特別な思い出作ろっか」 「え?」 「誰にも言わない、二人だけの秘密の思い出」 「うん。でも、それってどんな思い出?秘密ってなんかいいね。  ドキドキする」 子供みたいな提案に、胸の中に顔を埋めたままの智哉がくすくすと笑う。 「絶対、忘れられない思い出」 抱きしめた身体に回した手を、智哉の両肩に移動して そっとその身体を胸から離すと 「智哉」 名前を呼んだ。 上目遣いに俺を見上げる幼馴染の大きな目と目が合う。 少しだけ開いた唇に、躊躇うことなく自分の唇を重ねた。 冷えた唇は少しカサカサしていたけれど そこから僅かに吐き出される吐息は温かかった。 智哉の「好き」と俺の「好き」はもしかしたら形が違うのかもしれない。 純粋な智哉のそれと、邪な俺のそれ。 あやふやで曖昧で、形にしてはいけないと心の中でずっとブレーキをかけていたこの感情を今、智哉の中に残しても良かったのだろうかと、離れた唇に残る感触に一瞬不安になったけど、その不安はすぐに安堵に変わる。 「ありがとう、周ちゃん。大好きだよ」 唇を離し、改めて向き合った智哉は やっぱりいつもと同じように柔らかく微笑んでいて とても嬉しそうで、幸せそうに輝いて見えたから。
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