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 彼女は佇み、構えたカメラと眼鏡のレンズ越しに、遥か遠くを見据える。  ただ一人、黒髪を雪の白に染めながら。 「こんな所で撮るの?何も無いのに」  白い息と共にぽつりと投げかけた僕の疑問をうけて、やっと彼女は、僕と目線を合わせた。  合わせて、細めた。 「何もないから撮るの。真っ白だから、撮るの」  『凡人のあなたにはわからないでしょうけど』  そう言われた気がした。  白い雪が、彼女を覆って。彼女はそこに溶け込むようだった。
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