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二ヶ月前に見た彼女の表情を、よく覚えている。
色白の顔にシワひとつ寄せないのに、酷く泣きだしそうな表情をしていた。
僕は、再びあの場所に向かっていた。
二ヶ月前の億劫な気持ちは何処へやら。胸の内では「また彼女に会えるのでは?」会ってどうする気かは知らないけど。
今回は出張ではない。そもそも、前回だって出張ではない。見栄を張って出張だと言ってみただけだ。
あの辺鄙な田舎の寒空の下にいた理由は、通院だ。
十年前、小五の時に大きな交通事故に巻き込まれた僕は、父と母とそれまでの記憶を失った。その時の後遺症で記憶力に支障はないかを、二ヶ月に一度ほど検査してもらっている。
もしかしたら、彼女は僕が記憶を失う前の友人だったのかもしれない。それならきっと、初対面だなどと言って傷付けてしまったかな。
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