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雪の降る日
普段は全く表情の変わらない僕の彼女。
だが、カメラ片手に一心に雪を見て、良いアングルを模索する彼女の横顔だけは、キラキラと輝いて眩しかった。
何も言わずただじっと見ているだけなのだが、目は口ほどに物を言うようだ。
普段は寡黙な彼女の目は、いつにも増して光を宿し、新しいおもちゃを得た子供のようだった。
「……何?」
彼女は煩わしそうに僕を見る。
「いや、綺麗だなと思って」
「えぇ、雪って綺麗よね」
違う、雪のことじゃない。
そう言いたくても言えない僕の弱い気持ちは、雪とともに溶けて、じわりと黒いアスファルトを濡らした。
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