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プロローグ
《ここは…どこだろう?》
都会でもなく、田舎でもなく…。ごくありふれた街の一角。すれ違う人々は楽しそうに会話したり手をつないでいたり、それぞれが思いのままに過ごしている。どこにでもある日常風景に、なぜかいつもとは違う違和感を覚える。
《いつもと同じ時を過ごしているはずなのに…。何だろう。この心の奥から這い出そうとしている、得体の知れない不安感は…》
もう一度、ゆっくりと何かを確かめるように、一つ一つ周りを見渡す…。
晩秋の青い空。肌寒さは感じないが、少し寂しくなった街路樹の木の葉は、まもなく冬の訪れを知らせるようだ。秋色のジャケットや薄手のロングコートを羽織っている人も見かける。
『!』
目の前を少年が歩いていた。小学校高学年ぐらいだろうか。ストレートの黒髪は耳が隠れるか隠れないか位のショートスタイルで、自分を導くかのように手をつないでいる。
安堵の気持ちとともに、やはりどこかにあるこの不安感は、手のひらを通して少年には伝わっていないだろうかと、心配する自分がいる。
そんな気持ちを懐きながら、しばらく歩みを進めていた。
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