細い雪

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 1月1日。現代日本では正月のこの日、雪がまばらに降る中で少年と少女がカメラを片手に神社への道を外れてざくざくと歩いている。 B「……どこまでいく?」 A「まだ先だよ」 白くけぶる視界に少女の姿が見えにくいのか、少年は目を眇めてその背を追っている。 B「戻れなくなるよ」 A「大丈夫だよ」 ざくざくと雪を踏み固めながら進んでいく少女に迷いはない。 B「この辺じゃだめなの」 少女はカメラを両の手で抱きかかえるようにして振り向く。 その表情は細かに降る雪のごとく無垢だ。 A「世界で二人きりになれる場所までいかないと、だめ」 頬を赤く火照らせた少年が異を唱えることは終ぞなかった。
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