日々是好日

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 「あー、もしかして、私、怪しい奴だって思われちゃってました? あはははは…ですよねー。 急に驚かせちゃってすみません! 私の悪い癖なんです、良い被写体を見つけると、つい直ぐに声をかけちゃうの。 でも、安心してくださいっ! 私、全っ然怪しい奴じゃないですから! って、自分で言ってる時点で怪しいですよね! やだなぁ、もう、どうしよう~!」  一人でそうパニックになりながら話し出す少女に、自然と笑みが零れる僕。  (どうやら、変な人じゃなさそうだ)  寧ろ、僕と同じで写真が大好きな人なのかもな。そうしたらーーもしかしたら、良い友達になれるかも。  そんな淡い期待を胸に秘め、僕は彼女に手を差し出すと、モデルの話を快諾した。 「嬉しいなぁ。 ありがとうございますっ!」  僕の返事を聞き、とても嬉しそうに笑う少女。その笑顔を見ると、何故だか僕もとても幸せな気持ちになった。  (ああ……もしかしたら、僕はこの子に恋をしているのかもしれないな)  ふとそんな事を考えながら、彼女の指示通り、崖にあった柵に肘を乗せ、僕は思案に耽る様なポーズをとる。するとーー。 ーードンっ!  行き成り、激しく誰かに突き飛ばされた。柵を越え、真冬の海へと投げ出されていく僕の体。どんどん空と彼女が遠くなっていく。  (一体誰が……? 何故……?)  そんな思いを込め、突き落とされた崖を見てみるとーーそこには、カメラを構え、幸せそうに笑う彼女の姿があった。  「一回撮ってみたかったんですよね。 人が死ぬ瞬間」  そう言うと、彼女は落ちていく僕に向かい、一心不乱にシャッターを切り始める。遠くなのに、何故か近くに聞こえる彼女のシャッター音。  波間に消え逝く間際、見上げた空はーー今までに見たことがない位、澄み切った美しい青色だった。  (ああ……誰か僕のカメラを持ってきてくれ……。 あの青が撮りたいんだ……)  そうして、抜ける様な空の青さをこの目に焼き付けたまま、僕の意識は永遠のーー二度と起きることのない眠りの中へと誘われていった。  「あーあ、見えなくなっちゃった。 でも、いい写真が撮れて良かったぁ。 あ……ねぇ、そこの君?」 ーー次は君が私のモデルになってみない?    
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