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それともうひとつの悩みは子供たちに
付きまとわれるということである。
私の住んでいる近辺の住民には、
私の身の事情を受け入れてもらうために
以前手紙を送ったのだが、
「夏目博士のお姿が変わっても、
私どもの家族一同の接し方が
変わることはありません。
どうかお体に気をつけて下さい。」
といった励ましの手紙を
送ってくださった方もいれば、
「して、何故そのような
お姿になられたのかは
見当も付きませんが
うちの子をそのトゲで
ケガさせた暁には動物園に通報及び
輸送の手続きをこちらで
進めさせていただきます。」
と快く思わない人からの
クレームの手紙も届いたのである。
しかし好奇心潰えぬ子供たちからしてみれば
私ほど興味を惹かれるものはないだろう。
現に買い物に出かけるたびに
子供たちが狩人のような
眼差しで追ってくるので、
スーパーに着く頃には
足がまるで生まれたての子鹿のように
まともに歩けなくなってしまうのだ。
いい運動になっていると思いたい。
が、いっそここまで
生活に苦しむことになるのであれば、
動物園で一生お世話に
なったほうがいいのでは?
と真剣に考えることも多くなってきた。
いや、しかし、私にはまだやるべきことがある。
その目標を成し遂げなくては、
おめおめと動物園でちやほやされることは
決して許されないのだ。
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