第2章 バイト先で

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なぜ自分が介護施設を選んだのか、正直自分でもわからなかった。 今はもう亡くなった自分のおじいちゃんがデイサービスは利用していたけど 好んで遊びに行きたいような場所じゃなかった。 おじいちゃん、おばあちゃんしかいなかったし いつも独特な匂いがした。 だけど、品出しとかそういうんじゃなくて もっと人と関わってみたかった。 将来、何になりたいとか 将来、どうしたいとか 自分の中で決まってるわけじゃなかった。 でも、なぜだか惹かれるものがあった。 幸い学校の方もそれなりにバイトには理解があったので親の同意書をもらうことも スムーズに進んだ。 ・・・・ 初日、私は半袖にパーカーそして、チノパンと動きやすい服装で施設の前に立っていた。 自宅からバスで15分 住宅街から少し離れた静かな場所にその建物はあった。 全部で3階建の綺麗な建物。 内容についてはよくわからなかったけれど 確かグループホームとかいう少人数の施設だと聞いていた。 バイトに行ったあの日、 なぜかめちゃくちゃ好気な目でみられて  事務局長さんからは 「若いのに偉いねえ、でも大丈夫?結構ハードだよ」 と言われたのを思い出した。 「ハードってどういう意味だろう?」 よくわからずフロアに連れて行かれると 木の温もりが感じられるフロアに何人かのお年寄りの人たちがいた。 そわそわ落ち着かない感じで、動いている人もいれば 人形に向かって何か一人で喋ってる人もいた。 「みんなーちょっと手を止めて聞いてください。今日から土日こちらで夕方まで働いてくれる 瀬尾穂花さんです。自己紹介してもらうから聞いてあげてね」 そう女の人に案内され 「え、えーっと瀬尾穂花です。高校行きながらなんで土日だけですけど、宜しくお願いします。また色々教えてください」と話した。 まばらな拍手をもらいながら 私は紹介してくれた女の人に 「瀬尾さん、これから大変なことも多いと思うけど頑張ってね! あ、それから髪の毛は仕事中は縛ってね。」とゴムをわたされた。
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