第1章 出会い

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一也(かずのり)くんってすごいねー…。仕事もして、その足で学校へも行って。 その点、私と来たら毎朝お母さんに起こしてもらって、お弁当も作ってもらって…甘えてるよね私。」 一也くんに会って改めて、自分がどれだけ恵まれてるのか分かった。 クソ生意気な弟に、喧嘩は売ってもお小遣いとかあげた事もない… 「イヤ、別に良いんですよ、瀬尾さんは瀬尾さんのままで。」 久しぶりに先生以外の誰かから苗字で呼ばれた事が恥ずかしくて、思わず俯いてしまった。 「あ、じゃあ俺ここで降りるんで!」 そうやって、プシューッとドアが閉まると同時に一也くんは走って行ってしまった。 …… 帰ってからもずっと、ベッドで仰向けになりながら 一也くんとの言葉を思い出していた。 「お母さん達が離婚して、自分が学校に行きながら働くなんて、 私なら考えられないなー…」 いつも当たり前のように起こしてもらって、 お弁当もほぼ毎日作ってもらって 学校から帰ってきたら、 手も洗わずつまみ食いするから、 「コラッ、ちゃっちゃと手を洗って勉強しなさいっ」て怒られてしまうそんな始末。 一也くんは、きっと本当は勉強に専念したいんだろうな… とか、色々考えた。 色々考えて考えて、 私もバイトをすることに決めた。
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