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「一也くんってすごいねー…。仕事もして、その足で学校へも行って。
その点、私と来たら毎朝お母さんに起こしてもらって、お弁当も作ってもらって…甘えてるよね私。」
一也くんに会って改めて、自分がどれだけ恵まれてるのか分かった。
クソ生意気な弟に、喧嘩は売ってもお小遣いとかあげた事もない…
「イヤ、別に良いんですよ、瀬尾さんは瀬尾さんのままで。」
久しぶりに先生以外の誰かから苗字で呼ばれた事が恥ずかしくて、思わず俯いてしまった。
「あ、じゃあ俺ここで降りるんで!」
そうやって、プシューッとドアが閉まると同時に一也くんは走って行ってしまった。
……
帰ってからもずっと、ベッドで仰向けになりながら
一也くんとの言葉を思い出していた。
「お母さん達が離婚して、自分が学校に行きながら働くなんて、
私なら考えられないなー…」
いつも当たり前のように起こしてもらって、
お弁当もほぼ毎日作ってもらって
学校から帰ってきたら、
手も洗わずつまみ食いするから、
「コラッ、ちゃっちゃと手を洗って勉強しなさいっ」て怒られてしまうそんな始末。
一也くんは、きっと本当は勉強に専念したいんだろうな…
とか、色々考えた。
色々考えて考えて、
私もバイトをすることに決めた。
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