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宝石発掘-宝石探し another world-
その日、ハナコは絶句した。小学生の頃から温め続けていた思い出が、それはもう硝子が砕け散るが如く壊れてしまったからだった。
「ハナちゃんもやっぱり見た目だけで判断する人なんだね」
世の中見た目が九割と言うが、大衆は世間体を気にしてか、心が一番と答える人間が多い。だが、そんなものは社交辞令の様なものであり、心の奥底では容姿を値踏みしてから心に目を向ける人間が多い。それは人間に限らず、生き物の生殖本能及び子孫繁栄の遺伝子プログラムがインプットされているのだから仕方あるまい。
ハナコは愕然とした。それは、思い出が壊れてしまったことなのか、はたまた、自分自身の偽善者ぶりに驚いたことなのか。
「俺の容姿が昔のままだったら、きっとハナちゃんはそんなひきつった笑顔にはならないんだろうけど」
清潔感のある姿。きっちりとスーツを着て、仕事もしっかりこなしている。一体何故、私の顔はひきつるのか。
何も言い返せないハナコは、黙り込むことしか出来なかった。
「あの林間学校で出会った俺はもういないんだよ」
ほんのりと青く灰色がかった瞳は昔のままなのに。
「言葉だってこれだけ話せる」
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