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「どうして、嫌いな人と結婚なんてしなければならないの?」
僕はそれを聞いておやっと思った。「好きでもない人」「知らない人」との結婚と言って反発する人は世間には少なからずそれなりにいるだろうが、「嫌いな人」と断言してしまうのはかなり珍しいケースだった。どうやら彼女たちは多少なりとは面識があるようだった。
僕がそんなことを考えている間に男の声はあっという間に大きくなってきていた。
「おおーい、私の愛らしいメグ、どこにいらっしゃる」
寒気がしそうな胡散臭い言葉が大分近づいてきた。木の上から地上を眺めると、すぐそばにいるのが確認できた。
上質なシルクのシャツが太陽の光を反射して、僕のところまで届いた。そしてその明かりは同時に彼の顔も照らした。
-!?
僕は慌てて寝転んでた体制を正して、じっと彼を見つめた。
「ど、どうしたのルー?」
戸惑うように小声で訪ねる彼女。でも僕はそんな彼女を無視して、彼を観察し続けた。
如何にも貴族らしく目鼻立ちが整った顔にはあまり似つかわない、大きな傷が左頬にあった。そしてその傷に僕は見覚えがあった。
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