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-僕の大切な家族や友達は、そんなことで殺されたの…?
幼かった僕は悲しみと怒りで震え出した。するとその気配に気づいた男は僕の方へ振り向き、舌打ちをして銃口を僕に向けた。
パンッ。
再び乾いた銃声を僕が耳にするのと、鼻先に焼けつくような痛みを感じたのはほぼ同時だった。致命傷にはならない場所ではあったが、幼かった僕は痛みと恐怖で倒れた。
「ちっ、まだいたか」
「ルーカス様…!!」
「わかったよ、わかった。これで帰るさ」
従者を宥めるように男は言った。
その夜は見事な満月だった。木々の間から漏れた月光が男の姿を照らした。
左頬には、貴族の整った顔には似つかない大きな傷。
僕は痛みに気が遠くなりながら、その男を記憶した。
そのあと全てを失った僕を気にかけてくれる親切な声は数多あった。でも僕はそれら全てを断った。もう大切なものを失う苦しみは味わいたくはなかった。だから僕は1人を好み、誰かと繋がろうとはしなかった。
そして今、その原因となった男が僕の目の前にいる。
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