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彼女は気まずそうに僕を見つめ返してきた。そしてしぶしぶといった様子で口を開いた。
「彼はお隣の領、シーグレス子爵の次男、ルーカス=ギィディングス」
-ただのお隣さんが、こんな大袈裟な探し方をしないだろう。
僕は無表情に彼女を見つめ、続きを促した。
「…それで、お父さまが決めた許嫁」
不服そうな、でもどこか今にも泣き出しそうな顔をして彼女は言った。
どうやら彼女によれば、バートン家の子どもは彼女1人で兄弟なし。一方シーグレス領主のギィディングス家は息子が2人。爵位の継承権があるのは長男のみだから、その権利のない次男のルーカスと婿の欲しいバートン家の彼女が結婚すれば全てが丸く収まるではないかと、仲のいい両家の親が宴の席で婚姻を決めてしまったらしかった。上流階級で親同士の決めた結婚なんて珍しくはなかったが、彼女はそれを酷く嫌がっていた。
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