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季節は冬。粉雪に反射する陽光が目に刺さる。だがそれを和らげるのが、視界の先に居る女性──
背後を二季桜の淡いピンクが彼女を優しく包んでいた。
俺はそんな彼女に声を掛けようと近づくと、写真撮影をしていた彼女はすぐにこちらに気づいた。
A「あんた…見るからに寒そうね」
B「かっこいいでしょ?」
A「なんで袴なんか着てるのよ」
B「神社でさ、袴と言えば一つじゃん…」
Aは束の間俯いて考えていた。かと思うと混じり気のない真顔でこう答えた。
A「コスプレ?」
俺は思わず頭に手をやる。
──相変わらずだな
B「違うわ…!」
そうつっこんだBは、すると暫く黙りこくった。
そして深呼吸で何か空気が張り詰める。
B「…結婚式さ、ここで挙げたいなぁって」
刹那、Aははっとした表情で頬を紅潮させた。
カメラを持つ両手が下がる。
何気ない日の昼下がり。
幼い頃からよく知るAは僅かに笑みを浮かべながら、しかし頬は全く桃色に染めている。
彼女はやや俯きながらこう返した。
A「私、結婚式でウェディングドレスが着たい…」
B「あー」
Bははっとした顔で頷いた。
A「あと…まだプロポーズどころか、告白もして貰ってないんだけど」
B「あー…」
Bは今度はあからさまに頭に手をやり、わざとらしいやれやれという仕草を見せた。だがすぐに袴の懐に手を入れると、何か箱を取り出した。
A「…あ」
B「小学生来ずっと言えないヘタレだったけど、ようやく心を決めたんだ。どうか僕と、結婚を前提にお付き合いしてください!」
Aの口が僅かに開いている。しかしなかなか言葉が出ないのか──。
──五秒が経った
──十秒経った
そして、一分程経っただろうか───
AはBを被写体にして手にしていたカメラに収めると、少し前に進みBに耳打ちをした。
か弱い声だった。
A「この写真…………で撮ろうね、あなた」
AはBに、はっきりと何かを伝えた。
その瞬間、BはAをがばっと抱きしめ伝え返した。周りに木々の大衆が居座っているけど───
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