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ひとりの雄がウラセサンに棒を突きつけ、「ここに来てた猫ちゃんたちなんですかね?」と言った。
「わかんないねえ」と、ウラセサンが答えた。
「でも、毎日ここで餌をやってるんですよね」
「誰がそんなこと言いました?」
「いえ、誰っていうか」
「わたしは知りませんよ」と言って、ウラセサンは歩き出した。
しゃべっていたのとは別の、黒い箱を担いだ雄がウラセサンの方に箱が向くように体を動かした。
ウラセサンが行ってしまうと、入れ替わりにキヨシサンがやって来た。
「悪くなったものでもくれたんでしょう。上辺だけの愛護ですよ」
雄は、こんどはキヨシサンに棒を突きつけた。
「それにしても、猫が何匹も次々に死ぬというのは異常ですよね」
「食中毒でしょうな」
「猫には随分迷惑を?」
「まあねえ。庭が糞だらけになるんです。この餌場に近い家は大変ですよ。猫は食事して、すぐ排泄しますから」
「猫に詳しいんですね」
「こう猫害が酷いと調べもしますよ」
黒い棒を持った雄はすこし黙り、声を低くして話し出した。
「埠頭定食という言葉をご存じですか」
キヨシサンは怪訝そうな顔をして首を振った。
雄は続けた。
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