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7 犯人
その日以来、ウラセサンが餌をくれなくなった。それどころか道で見かけることもない。人間にも事情があるのは分かるが、俺たちとしては大変に困る。キヨシサンはくれるが、時間がめちゃくちゃで、ありつけたり、ありつけなかったりする。
だんだんと湿気が増えて、もうすぐ、あの雨ばかりの季節がやって来る。それは恋の季節のはじまりで、俺のなわばりにも色々な猫がやって来ては雌を探して鳴いた。俺はその度に追い払って、正直、結構疲れていた。
その日俺は飢えて、食べ物を探して、いつもは通らない道を通ってみた。そうしたらワナビが置いたプランターのそばに来た。一度トイレに使った切りの、あのプランターだ。
そのとき風向きがふいに変わり、甘い素敵な匂いがしてきた。匂いはプランターの陰の皿から漂っている。魚とご飯だ。
これで、しばらくしのげる。そう思って、俺は食事に口をつけようとした。すると突然、なにかが俺に被さった。
しまった! と思ったが、もう遅い。
暴れたが、暴れるほどに網が絡まって、すぐに身動きが取れなくなった。
「なにしてんの?」
俺の悲鳴を聞きつけたのだろう、2階のベランダからワナビが言った。
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