7 犯人

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「深夜、降りて来たらどうだ」  タモの柄を捻って俺の捕獲を確実なものにしながら、キヨシサンが言った。  玄関からワナビが出て来た。 「この餌、深夜だよな」 「は? ちがうよ」と、ワナビが言った。  キヨシサンは、それを聞いて深く溜め息をついた。俺は凍りついた空気に当てられて、暴れるのを止めた。 「誤魔化すな。これ、埠頭定食だろう」 「なに言って――」 「気持ち悪いことをするなと言うんだ!」と、キヨシサンはワナビが話し終わる前に大声を出した。  俺は驚いて、体がびくりとした。  見ると、ワナビは肩を上げて、首を短くして固まっている。  ワナビは震え声で言った。 「ふざけんなよ。普段は笑顔で嫌味ばっか言って、いざとなると恫喝かよ。子供の頃から、そうやって俺を台無しにしたんだろうが。殺すぞ!」 「にゃー」と、俺は鳴いた。 「殺してみろ」と、キヨシサンが言った。  じり、とワナビが動いた。  俺にはワナビが本気だと分かった。俺たち野良には、そういうことが分かる。 「あたしだよ」  嗄れた声が割って入った。  俺は声のした方へ首を捻った。くそう、こりゃあ猫にもきつい体勢だぜ。  そこにはオカアサンが、緑の液体の入った容器を下げて立っていた。     
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